冬期休館中の水族館。クラゲ担当職員の岩内裕樹(中島広稀)は、珍しいクラゲを探して毎日海辺を歩き回っている。ある日、港で手紙入りの瓶を海に流す女を見かけるが、声をかけそびれる。
水族館の近所に引っ越して来た少年、武藤霧が館内に忍び込み、クラゲを盗みだす事件が起きる。
少年は、盗んだクラゲを殺して海に捨ててしまった。飼育員から、「クラゲは死んだら綺麗な水になる」と聞いたことがきっかけらしい。謝りに訪れた少年の母親は、港で瓶を流していた女、武藤映子(大塚寧々)だった。この母子が、また引っ越すことを知った岩内は、二人にある贈り物を用意する。
老舗写真館の主人、小林幹夫(大杉漣)が病に倒れ、離婚した妻の元で育った息子、真太(河合龍之介)が久しぶりに帰郷する。真太は、倉庫で未受け取りの写真を見つけるが、写真館の一室でキャンドルショップを営む、武藤映子に言われるがまま、持ち主を探すことになる。
そんなある日、謎めいた老婦人、蕗子(香川京子)が写真館に現れる。蕗子に誘われて訪れた草原で、真太は幼いころから記憶の奥で響き続けていた“歌声”の秘密と、父の気持ちを知る。
町の港に豪華客船の寄港が決まる。
町内会は歓迎式典の出し物を児童合唱団か、和太鼓の会かで悩んでいた。児童合唱団は、お茶屋を営む水野圭一(水橋研二)が指導している。合唱団の前任で、圭一の恩師の野崎美津子は病に倒れて以降、意思疎通のできない状態にあり、夫の野崎芳郎(小松政夫)が介護している。芳郎は、美津子を車椅子に乗せて港を散歩するのが日課だった。
ある日、芳郎は圭一に、美津子が作った歌を合唱団で演奏するよう依頼する。
挿入歌「静かな空」(作詞作曲/穂高亜希子)
夏の終わりの雨の日。
粗大ゴミ回収業の岸田亮介(草野康太)は引き取りの依頼を受けて、とある場所へと赴く。訪れた先は、激しく雨漏りのする古びた地下駐車場。そこで、依頼主の女から、「ピアノを海に捨ててほしい」と頼まれる。
最初は断っていた岸田だったが、「捨てる場所には目印があるから」と引き下がらない女の様子に困惑しながらも、その意味深なピアノに興味を持つ。
7年前に父を亡くした中学3年生の久保桃子(久保田紗友)。今は、老人介護施設で働く母、久保 七海と二人で暮らしている。母の再婚を機に町を離れることになった桃子は、亡き父との思い出の残る町の科学館へと向かい、かつて父が仕掛けたイタズラの答えを見つけようと中庭を探す。
科学館の中庭に展示されている蒸気機関車を毎日整備しているのは、元国鉄職員で、かつてはこの車両の乗務員だった老人、吉井武治(坂本長利)。科学館の改築にともない、機関車が解体されることを知った吉井は、解体業者の男と揉み合いになって職員に怪我をさせてしまい退職する。
ある夜、やけ酒に酔った吉井が科学館に忍び込むと……。
季節の変わり目になると老人施設を抜け出す元樹木医の入所者、河村作次。彼を担当する介護士の久保七海(橋本麻依)は、再婚を機に退職する日が迫っていたが、常々、河村が施設を抜け出す理由を知りたいと考えていた。
河村は、ある桜の老木の世話をしていた。七海が町を離れる日、河村は再び施設を抜け出して、彼女にあるメッセージを伝える。